AIブームの陰で、いま静かに問題になっているのが「水」です。米国には4,500を超えるデータセンターが稼働し、全米電力消費の約4.4%にあたる年176テラワット時を使っています。さらに38州で700以上が建設中。電力消費の大きさはよく語られますが、見落とされがちなのが冷却に使う水の量です。2023年の直接的な水消費量は推計で約175億ガロン。大型のハイパースケール施設1か所で、1日あたり100万〜500万ガロン——人口1万〜5万人の町に匹敵する水を使うとされます。
使った水の多くは「蒸発して戻らない」
データセンターは、サーバーの熱を逃がすために空冷と蒸発冷却を組み合わせます。問題は、蒸発冷却で使う水の最大85%がそのまま蒸発し、水系に戻らない点です。しかも2022年以降に建設された米国のデータセンターの約3分の2が、もともと水ストレスの高い乾燥地域に立地しているという指摘もあります。水消費は2028年までに2023年の2〜4倍に膨らむ可能性があり、電力と並ぶ「立地の制約条件」へと浮上しています。
日本のDC立地はどう構えるべきか
日本は比較的水資源に恵まれ、米国ほど深刻な水ストレスには直面していません。だからこそ、印西(千葉)、石狩(北海道)、関西などのデータセンター集積地にとって、「安定した水と電力、冷涼な気候」は世界的な競争優位になり得ます。一方で、電力の逼迫や送電制約は日本でも現実の課題です。今後は液冷(液体で直接冷やす方式)への移行や、排熱の地域利用といった「水と熱をどう設計するか」が、立地選定と施設設計の主戦場になっていくでしょう。
INFRA HEROES視点:データセンターは「電気を食う箱」であると同時に「水と熱を扱うプラント」です。現場の技術者にとっては、電力確保だけでなく、水利権・排熱・冷却方式まで含めた総合設計が問われます。日本の豊かな水と気候は資産ですが、それを持続可能に使う仕組みづくりこそが、AI時代のインフラ競争力を決めます。
出典:Lawrence Berkeley National Laboratory / EESI「Data Centers and Water Consumption」(https://www.eesi.org/articles/view/data-centers-and-water-consumption)、Lincoln Institute of Land Policy各レポートを参考に編集部が独自構成。
