銀座の細い階段を上がって扉を開けると、そこにあるのはわずか8席のカウンター。彼女と肩が触れるほどの距離で腰かけます。大将の健さんが笑顔で迎えてくれる。少し緊張していた彼女の表情が、最初の一貫でふっとほどける――今日は、そんな夜をつくれる一軒、銀座「寿司 健(たける)」の話をします。
2022年オープンの新星。8席に予約が殺到する理由
「寿司 健」は2022年4月に銀座でオープンした、いま最も予約の取りにくい鮨店のひとつです。食べログは3.88、開業まもなく「寿司 TOKYO 百名店2025」に選出され、The Tabelog Award 2025ではBronzeを受賞。店主の渡辺健さんは、名店「鮨あらい」などで腕を磨いた実力派で、あらいではオープンから個室を任されたほどの職人です。L字のカウンターはたった8席。だからこそ、目の前で握られる一貫の熱が、まっすぐ伝わってきます。
口開けから、心を掴まれます。たとえば、この牡丹海老。とろりと甘く、ねっとりと舌に絡みつく。添えられた本わさびの香りが、その甘みをいっそう引き立てます。

この店の主役は、鮪。三段の競演に言葉を失う
寿司 健といえば、鮪(まぐろ)です。まずは赤身。漬けの加減と赤酢のきいたシャリが、きりっと味を締めます。

続いて中とろ。脂と赤身のちょうど境目の、いちばん旨いところ。口の中でほろりとほどけていきます。

そして大トロ。”とろける”という言葉は、このためにあります。人肌のシャリと一体になって、すっと消えていく。ここで彼女が「……ずるい」とつぶやいたら、もう大成功です。

締めは名物の、太いトロたく巻き。大トロの脂と、沢庵のパリッとした歯ごたえ、そして海苔の香り。これを頬張れば、最後まで笑顔で終われます。

8席の店でこそ光る、現場仕込みの「気配り」
カウンター8席の鮨屋は、振る舞いがそのまま伝わります。だからこそ、現場で鍛えた気配りが効くんです。第一に、予約。人気店は電話もネットも激戦です。記念日が決まったら、とにかく早く動く。段取りは現場と同じで、早い者勝ちです。第二に、ペース。大将や周りに合わせて、ゆっくり楽しむ。出された鮨はすぐに食べる――これは握ってくれた人への礼儀です。第三に、会計。スマートに、彼女に気づかれないように済ませる。土木でも運送でも足場でも、段取りと気配りのいい男は信頼される。その力は、こういう一席でこそ生きます。
毎日、現場で汗をかいて稼いだ金です。年に一度くらい、大切な人と最高のカウンターに座る。そのために頑張る一年も、悪くないはずです。INFRA HEROESは、あなたの本気の夜を全力で応援します。
出典:寿司 健(食べログ) https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13271362/
