朝礼で「今日も暑いから、水分しっかりな」。声をかけて、現場に送り出す。社長としては当たり前の気づかいです。ですが、この夏からはそれだけでは足りません。万が一、足場の上や掘削の底で誰かが倒れたとき、「言った・言わない」では会社が守れない時代に入りました。
「気合」では守れない。去年、過去最多の1,257人が倒れた
厚生労働省の確定値によると、2024年(令和6年)に職場で熱中症により死亡・休業した人は1,257人。前年から151人増え、過去最多を更新しました。業種別では製造業235人、建設業228人と、この2業種だけで全体の約4割。亡くなった31人のうち建設業が10人で最多です。しかも約8割が7月・8月の2か月に集中しています。まさに、これからが正念場です。
こうした実態を受けて、2025年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行され、職場の熱中症対策が「義務」になりました。今年でちょうど2年目の夏です。対象は、WBGT28度または気温31度以上の環境で、継続1時間以上、または1日4時間を超えて行う作業。屋外の足場・解体・土木はもちろん、炎天下での荷役が続く運送も他人事ではありません。違反すれば6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金もあり得ます。
明日からできる、紙一枚の「守る仕組み」
義務の中身はシンプルです。一つは、体調が悪い本人や、異変に気づいた仲間が「すぐ報告できる体制」を決めて、全員に知らせておくこと。もう一つは、報告が来たら「作業を止める→涼しい場所で体を冷やす→必要なら受診」という手順をあらかじめ決め、周知しておくことです。
難しく考える必要はありません。元請の朝礼ボードや休憩小屋に、連絡先と手順を書いた紙を一枚貼る。班長のスマホに「倒れたらまず親方へ」と共有しておく。現場にWBGT計を一台置き、数字で「今日は危険」と全員が分かるようにする。これだけで、職人の命も、会社の看板も守れます。解体や足場のように逃げ場のない現場ほど、この一手間が効きます。
職人は会社の財産です。倒れてからでは、工期も信用も人も失います。「うちは大丈夫」ではなく、「うちは仕組みがある」と言える社長でいきましょう。暑さに本気で備えるのも、現場の男の意地です。
出典:厚生労働省「令和6年『職場における熱中症による死傷災害の発生状況』(確定値)」、厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行)」
