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「お客様だから」で、社員をすり減らすな──10月1日、カスハラ対策が“全社長の義務”になる。埼玉の荷台と現場で人を守る三つの備え

「お客様だから」で、社員をすり減らすな──10月1日、カスハラ対策が“全社長の義務”になる。埼玉の荷台と現場で人を守る三つの備え

荷主の担当者から「なんで指定の時間に着かねえんだ」と電話口で三十分怒鳴られたドライバー。施主から「気に入らないから最初からやり直せ」と現場でどやしつけられた若手。──こういう場面を「客商売だから仕方ない」で片づけてきた社長へ。2026年10月1日から、そのカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が、法律で”全事業主の義務”になります。社員を守る仕組みを持っているかどうかが、これから問われます。

「うちは関係ない」では済まない。経過措置もない

根拠は、2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法です。労働者を一人でも雇っていれば、中小企業も個人事業主も例外なく対象。パワハラ防止のときのような「中小は数年後から」という猶予はなく、10月1日に一斉スタートします。厚生労働省も2026年2月に事業主向けの指針を公表し、何をすべきかを具体的に示しました。

ここで押さえたいのは、カスハラの線引きです。客が怒っている、という事実だけではカスハラになりません。要求の中身や伝え方が社会通念上の範囲を超え、その結果として社員の働く環境が害されたときに、初めて法律上の対象になります。正当なクレームまで突っぱねろ、という話ではないのです。だからこそ、線を引くのは現場任せではなく会社の役目になります。運送では荷主や元請から、建設では施主や上位の元請からの理不尽が起きやすい。立場が弱く「言い返したら切られる」と泣き寝入りしてきた業種ほど、この法律は効きます。実際、顧客や取引先からの著しい迷惑行為を過去三年で一度以上受けた人は、厚労省の調査で約15%にのぼります。

社長が今から仕込む三つの備え

一つ目は、方針を紙一枚にして貼ること。「当社は社員へのカスハラを許さず、毅然と対応する」と明文化し、休憩所や車庫、事務所に掲示して全員に周知する。指針が最初に求めるのはこの意思表示です。二つ目は、相談の受け皿を一人決めること。専門部署はいりません。「何かあったら誰に言えばいいか」を明確にし、相談した人のプライバシーを守り、相談を理由に不利益な扱いをしないと約束する。三つ目は、対応手順を先に決めておくこと。暴言や過大要求があったら記録を残す、一人で抱えさせず複数で対応する、悪質なら取引や現場を見直す──荷主や元請が相手でも、社員の安全と健康が先だと社長が腹をくくる。土木や解体、足場の現場でも、この三つは今日から動かせます。

カスハラ対策は、社員に「会社は自分を守ってくれる」と伝える最強のメッセージです。人手不足のこの時代、それは採用にも定着にも効く。理不尽から背中を守ってくれる社長のもとには、人が残ります。10月1日を、面倒な義務ではなく、いい会社に変わるきっかけにしてください。

出典:厚生労働省「改正労働施策総合推進法」および「事業主が講ずべき措置に関する指針」(2026年2月公表)/政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/article/202510/entry-9370.html)

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