「あの現場、結局いくら残ったんだ」。決算のときになって初めて、社長がそう首をひねる──土木でも足場でも解体でも、こんな“どんぶり勘定”に心当たりはありませんか。売上は過去最高なのに、なぜか手元にカネが残らない。その正体は、上がり続ける原価を現場ごとに掴めていないことにあります。
数字が裏付けています。国土交通省の公共工事設計労務単価は2026年3月適用分で14年連続の上昇となり、全国・全職種の平均が初めて2万5千円台に乗りました。資材も高止まりで、日本建設業連合会の試算では、資材高と労務費上昇により建設コストは2021年1月から2025年夏までに全体で25〜29%も膨らんでいます。つまり、数年前と同じ“勘”で見積もれば、知らないうちに利益が溶けていく時代になったということです。
「終わってから」では遅い。原価は現場ごとに掴む
打ち手の一つ目は、契約前に「実行予算書」を一枚つくること。材料・外注・労務・経費に分け、現場ごとの“着地予想”を先に描く。二つ目は、その予算と実際を毎週つき合わせること。月末や竣工後ではなく、走っている最中に赤信号を見つけるためです。運送業なら一台・一便あたりの燃料と人件費、足場・解体なら手間と処分費が、想定を超えていないかを進みながら確認する。住宅・非住宅の元請なら、追加工事の口約束を金額に変えて記録することも忘れずに。
三つ目は、道具に頼ること。施工管理・原価管理アプリを使えば、職長がスマホで日々の材料や人工を入力するだけで、粗利がリアルタイムで見えます。IT導入補助金などを使えば、こうしたシステムの導入コストは軽くできます(制度の対象・金額は毎年変わるため、申請前に最新の公募要項で確認を)。紙とどんぶりから一歩抜けるだけで、赤字現場は必ず減ります。
“勘”を、数字で裏打ちする社長になる
長年の勘は、社長の宝です。ただ、原価がこれだけ動く今は、その勘を数字で裏打ちしてやらないと空回りする。実行予算は勘を捨てることではなく、勘を武器に変える道具です。値決めの場面でも「うちはこの原価だから、この単価は譲れない」と根拠を持って言える社長は強い。今日の一現場から、着地の数字を先に描いてみる。それが、忙しさの先にちゃんと利益を残す、確かな第一歩です。
出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」、日本建設業連合会「建設資材高騰・労務費上昇の現状(2025年8月版)」。
