米国の電力インフラで、いま最大のボトルネックになっているのが「変圧器」です。発電所と送電網をつなぐこの地味な機器の納期が、平時の数か月から最長で約4年にまで延びています。送電網に接続を待つ発電・蓄電プロジェクトは2024年末時点で約2,300ギガワット分が列をなし、AIデータセンターの新設ラッシュがそこへ追い打ちをかけています。発電所を建てても、つなぐ部材が届かない——そんな倒錯した状況が広がっているのです。
なぜ変圧器が足りないのか
背景には、需要の急増と供給力の細さがあります。大型の昇圧変圧器の需要は2019年比で274%増、変電所用も116%増。一方で、心臓部に使う方向性電磁鋼板(GOES)の国内生産は限られ、製造能力がすぐには拡大しません。既存の変圧器も平均使用年数が40年近くに達し、更新需要まで重なっています。2026年2月にはGEベルノバが変圧器大手プロレックGEの買収を完了するなど、供給網の囲い込みも始まりました。大型送電を伴う案件では接続までに5〜10年かかる例もあります。
日本も「系統制約」という同じ壁に直面
日本でも、再生可能エネルギーの導入を阻む最大の要因が「系統制約」、つまり送電網の容量不足です。北海道や東北で太陽光・風力を増やしても、それを大消費地へ運ぶ送電線と変電設備が足りない。日立エナジーや明電舎など日本の変圧器メーカーも世界的な需要急増で手一杯で、調達のリードタイムは確実に延びています。「発電を増やす」ことばかりが注目されがちですが、本当の勝負どころは、それを支える送変電インフラをいかに前倒しで整備できるかにあります。
INFRA HEROES視点:電源開発の現場では、もはや変圧器や開閉装置の「枠取り」を数年前から始めないと計画が崩れます。日本の電力・建設関係者にとって、米国の変圧器危機は「機器調達はプロジェクトの最重要リスク」という教訓そのもの。発注の早期化、規格の標準化、国内製造基盤の維持が、脱炭素と電力安定供給の両立を左右します。
出典:pv magazine USA「U.S. transformer market faces severe supply constraints as lead times extend to four years」(https://pv-magazine-usa.com/2026/05/11/u-s-transformer-market-faces-severe-supply-constraints-as-lead-times-extend-to-four-years/)/RenewableEnergyWorld、POWER Magazine各報道を参考に編集部が独自構成。
