COLUMN / INFRA HEROES

米建設現場で「34万9千人不足」──移民取り締まりが招く工期遅延と、日本の外国人材政策

米建設現場で「34万9千人不足」──移民取り締まりが招く工期遅延と、日本の外国人材政策

米国の建設現場で、いま「人がいない」という悲鳴が現実の工期遅延として表面化しています。業界団体の試算では、2026年に需要を満たすには約34万9,000人の新規入職が必要とされ、その数字は2027年には45万人を超えると見込まれています。さらに移民取り締まりの強化が、この穴を一気に押し広げています。フロリダでの摘発を受け、約230マイル離れたアラバマ州モビールの公共工事現場では作業員の半数が翌日から姿を見せなくなった、という報道も出ています。

なぜ「移民排除」が建設を直撃するのか

米国の建設労働者のおよそ3人に1人は移民です。とりわけ内装ボード(ドライウォール)工で57%、屋根工で53%と、特定の職種では半数を超えます。つまり移民は「補助的な人手」ではなく、技能職の中核そのものです。摘発のうわさだけで現場から人が消える──全米の建設会社の約28%が直近半年でICE関連の人員混乱を経験したとされ、これは賃金の高騰と工期延伸を通じて、最終的に住宅価格や公共事業コストに跳ね返ります。全米住宅建設業者協会は、労働力不足による経済損失を年間27億ドルと見積もっています。

日本の「2024年問題」と同じ崖が見えている

この構図は、日本の建設業界にとって他人事ではありません。日本もまた残業上限規制(いわゆる2024年問題)と高齢化で深刻な担い手不足に直面し、その穴を外国人材で埋めようとしている点では米国とよく似ています。技能実習制度に代わる「育成就労制度」が2027年に始まる予定で、建設分野は特定技能の受け入れを拡大してきました。違いは方向性です。米国が排除に傾く一方、日本は受け入れ拡大に舵を切っている──ただし、その日本でも、円安や処遇の見劣りで「選ばれない国」になりつつあるという別種のリスクを抱えています。米国の混乱は、外国人材を「いつでも調整できる調整弁」と見なした制度がいかに脆いかを示す反面教師でもあります。

もう一つ見落とせないのは、米国でデータセンターや半導体工場の建設ラッシュと労働力不足が同時進行している点です。需要が史上最高水準にあるのに人手が足りない、という日本の物流・建設にも通じる「需要超過型の人手不足」が起きています。

INFRA HEROES視点:人材は「在庫」ではなく「基盤」

現場のエンジニアや業界関係者にとっての教訓は明快です。第一に、技能労働力は半導体や鋼材と同じく「サプライチェーンの一部」であり、調達リスク管理の対象だということ。第二に、外国人材に依存するなら、定着・育成・処遇まで含めた長期投資なしには持続しないということ。米国が示しているのは、政策一つで現場の半分が消えうるという現実です。日本が同じ轍を踏まないためには、人を「呼ぶ」だけでなく「残ってもらう」設計が、これからのインフラ維持の生命線になります。

出典:Fortune – “Trump’s immigration crackdown is worsening the construction labor shortage threatening build costs”(https://fortune.com/2026/05/23/america-construction-shortage-trump-immigration-crackdown-ice-deportations-home-costs/)/Construction Dive – “The US may already have a negative immigration rate. That’s bad for construction.”(https://www.constructiondive.com/news/immigration-rate-construction-workers-labor-shortage-trades/817865/)

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