COLUMN / INFRA HEROES

ラスベガス〜LA高速鉄道がいよいよ本格着工──新幹線61年の経験を米国は活かせるか

ラスベガス〜LA高速鉄道がいよいよ本格着工──新幹線61年の経験を米国は活かせるか

米鉄道スタートアップのBrightlineが運営する高速鉄道路線「Brightline West」が、2026年春から本格的な土木工事に入った。ラスベガスとロサンゼルス東郊のランチョ・クカモンガを約350kmで結び、最高時速約320kmで走らせる計画だ。米国本土で初めて新幹線水準の走行性能を持つ「真の高速鉄道」となる見込みで、当初は2028年ロサンゼルス五輪開業を目指していたが、現時点での開業見込みは2029年9月にずれ込んでいる。

連邦資金と民間運営のハイブリッド

事業費は総額210億ドル超。インフラ投資雇用法(IIJA)から30億ドルの連邦補助を引き出しつつ、運営は民間のBrightlineが担う。米国型の鉄道整備としては珍しく、州間高速道路I-15の中央分離帯にレールを敷く方式を採用しており、土地買収を最小化して工期を圧縮する設計思想が貫かれている。日本の整備新幹線とは前提条件がまったく異なり、「土地問題に阻まれない高速鉄道」という発想自体が新しい。

新幹線は売り込めなかった

1964年の東海道新幹線開業から数えて、日本の高速鉄道は2025年で61年目に入った。累計輸送人員は60億人を超え、開業以来の乗客死亡事故はゼロ──という運行記録は他国の追随を許さない実績である。しかし今回、Brightline Westが採用する車両はドイツ・シーメンス製の「American Pioneer 220」で、日本勢は車両でも信号システムでも商権を取れなかった。テキサス州のヒューストン〜ダラス計画が新幹線方式(N700S)を前提に進んでいたものの、用地取得と政治的逆風で事実上凍結している現状とは対照的だ。

INFRA HEROESの視点

Brightline Westの本格着工は、米国がついに「高速鉄道を量産する市場」へ踏み出す節目である。日本のインフラ業界にとっては、車両・電気・信号で本陣を取れなかった反省点が残る一方、軌道スラブ、長大トンネル覆工、駅舎の鉄骨、地震・地盤対策ノウハウなど、日本のゼネコン・サブコンが食い込める領域はまだ広い。先行プロジェクトを足がかりに、カスケディア(シアトル〜バンクーバー)やテキサス計画など後続のHSRにどう参画していくかが、向こう数年の業界テーマになりそうだ。

出典:Newsweek「California’s Brightline West high-speed rail gets new completion date」、Railway News「Brightline West: 2026 Construction Update」、Wikipedia「Brightline West」

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